展覧会概要
【前期】「(Self) Portraits」
倉谷卓 (KURAYA Takashi) は塩竈フォトフェスティバルのグランプリ受賞やTOKYO FRONTLINE PHOTO AWARD での審査員賞受賞などで注目される気鋭の若手作家です。
Alt_Medium にて今回展示される倉谷の二つの新作は、どちらも携帯電話に備わったカメラ機能によって撮られた写真をベースとしています。自らが撮影者ではない写真を扱うその手つきはユーモアでありながらも、鋭い批判性を含んでいます。
どちらの作品も現在の私たちにとって身近な存在である携帯電話(スマートフォン)やアプリケーション /SNS というツールを用いて、私たちにとって最も見慣れた(と思いこんでいる)自身の姿を、被写体としています。
しかしその表現は、日常における私たちの写真への関わりの中に隠された、ある種の暴力性を浮 かび上がらせるものでもあります。 そこには、ごく身近であるが故に意識し難くも、私たちの現在の生に繋がる多くの問いを見出すことが可能でしょう。
この機会にぜひともご覧ください。
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倉谷卓個展「Your Camera is My Camera」によせて
私はどのような顔をしているのか。
私は自らの顔をこの目で見ることができない。水面、鏡、そして写真、様々なものを媒体として、そこに現れうつる像を見ることによって、私は自らの顔を知る。この顔が私なのだ、と。
自らを確認するための行為。しかし、そこにうつるそれは本当に私の顔なのだろうか。
ときには鏡の前で、自らが満足できる「私(の像)」が見えるように、振る舞うことがあるだろう。顔の角度やそれぞれの部分を意識的に動かしてみせること、それは誰に向かってなのか。
私が私を見ているとき、それはつまり、私は私に見られている瞬間だ。私は「他者に見られるべき姿の私」の像を作り出そうと身構える。そうしたとき、どこか緊張を伴いながら私は、自らには見えないその姿を意識する。それならば私たちは、私を含めた誰の網膜にも結像していない時こそ、その緊張から放たれて、安らぐことができるのだろうか。
倉谷卓の新作「(self)Portraits」は私たちの「安らいだ表情」を暴き立てる。他者を見ることに意識を向ける私たちは、被写体が目を瞑ることによって、そしてレンズという、見ることへの欲望を加速する装置の後ろに隠れることで、自らが見られることを忘れて、弛緩する。
写真によって見ることが可能となった「他者を見る私」は、私が見たい「私」だろうか。無意識の、剥き出しにされた顔。それを本当の私(の顔)と呼ぶべきなのか。
しかし、「本当の私(の顔)」などあるのだろうか。例え存在したとしても、それが私の求めているものと異なって見えたのならば、どうすれば良いのか。
人体の構造上、私は私の顔をこの目で直接に見ることができない。そして、何らかの媒介なしには自らの顔を見ることができないとすれば、私が見るその顔はすべて、その度合いは違えども、なにか媒体を経ることにより変質した像としてしか私の目には届かない。そうであるならば、どれもが本当の私と言うことも可能ではないのだろうか。もちろんその逆もまた。
倉谷の「雪の白さに目が眩んで」において提示される顔たち。見られるものとして存在する顔は、その顔を持つ自らにとってこそ、ある媒体と結びついた形でしかあり得ない。アプリケーションを用いて顔の部分を不自然なほどに歪め、強調すること。そしてそれを私の顔として受容することは、おそらく「自然」なのだ。
−Alt_Medium
プロフィール
倉谷 卓 / KURAYA Takashi
1984年山形生まれ
2005年日本写真芸術専門学校 卒業
現在、東京在住
個展
2015 | 「カーテンを開けて」(72gallery / 東京) |
「Ghost’s Drive」(森岡書店 / 東京) | |
2014 | 「Pets」(Broom Store / 大阪) |
「カーテンを開けて」(Bloom Gallery / 大阪) | |
2013 | 「カーテンを開けて」(No.401 / 東京) |
「カーテンを開けて」(birdo space / 宮城) | |
2009 | 「After The Sunset」(ニコンサロン大阪 / 大阪) |
「After The Sunset」(ニコンサロン新宿 / 東京) | |
2008 | 「淵」(コニカミノルタプラザ / 東京) |
グループ展
2017 | Kanzan Gallery Curatorial Exchange『言葉とイメージ』Vol.3 「写真は語る 倉谷卓 村上賀子」(Kanzan Gallery / 東京) |
2016 | 「I Only Have Eyes For You」(de sign de / 大阪) |
2015 | 「新章風景」(ターナーギャラリー / 東京) |
「いとしのちいちゃん」倉谷卓 × 山崎雄策(CCAA / 東京) |
受賞
2014 | 「TOKYO FRONTLINE PHOTO AWARD 2014」審査員賞 |
2013 | 「TOKYO FRONTLINE PHOTO AWARD 2013」審査員賞 |
2012 | 「TOKYO FRONTLINE PHOTO AWARD 2012」入賞 |
2011 | 「塩竈フォトフェスティバル 2011 写真賞」大賞 |
2009 | 「ニコンサロン juna21 」入選 |
2008 | 「コニカミノルタ フォトプレミオ 2007」特別賞 |
出版
2013 | 「カーテンを開けて / A Glimmer of Light」(塩竈フォトフェスティバル) |
Website
https://www.kurayatakashi.com/
倉谷卓個展「Your Camera is My Camera」
〔前期〕2017年6月29日(木)〜7月4日(火)「(Self) Portraits」
〔後期〕2017年7月6日(木)〜7月11日(火)「雪の白さに目が眩んで」
12:00~20:00 ※最終日17:00まで
※本展覧会は7月5日(水)に展示替えを行います。