2024年10月25日(金)~11月5日(火)※木曜日休廊
Alt_Mediumでは10 月25 日(金)から11 月5 日(火)まで、矢島陽介による写真展「a way of seeing」を開催いたします。
このシリーズは、矢島が自ら撮影した写真をモチーフに絵を描き、さらにその絵を撮影するというプロセスが中心となっています。モチーフは、絵画や写真における基礎的な対象であり、これまで矢島が繰り返し撮影してきた被写体である静物写真と、後ろ姿のポートレートで構成されています。絵は、ネガフィルムのように反転した状態で描かれたものもあり、それをフィルムで撮影することでネガ上に正しい絵が浮かび上がるという構造が生み出されます。
矢島は、キャリア初期に読んだスーザンソンタグのテキスト「A Little Summa(小さな大全)※」の一節が、その後の活動に影響をもたらしていると言います。
『 Photography is, first of all, a way of seeing. It is not seeing itself. 』
(まず初めに、写真は見るための手段であり、見ることそれ自体ではない)
また、同じくキャリア初期に、世界同時多発テロのニュースを見たこともその後の制作に大きな影響を与えていると言います。アメリカとイラクのニュースが飛び交う中、矢島は” 表だと思っていたものが実は裏から見たら裏だった”というごく当たり前のことを改めて意識します。それは社会に対するある種の懐疑的な視点を矢島に植え付け、結果としてネガとポジの構造を介した本作の制作にも繋がっています。
矢島は本作において、フィルム写真の構造を用いながら絵画と写真の境界を探る過程を提示しつつ、見る側の認識のあいまいさを含めた今日のわたしたちを取り巻く「ものの見方」について考察することを試みています。写真を用いたさまざまなアプローチを続ける矢島の作品を、この機会に是非ご高覧ください。
※ “A Little Summa” - Susan Sontag『写真との対話 “How to talk to photography”』(国書刊行会、2005年)