展覧会概要
「個人」という存在は一見具体的で自律的に見える。
そして「私は私だけの経験や時間を持っていて、他者のそれとは交わらない」という錯覚はいつしか、私とあなたに明確に線を引いた。
本展覧会は、演技の手法を用いて個人を解放する試みである。
今回、互いをよく知る古くからの友人同士で共同制作を行った。互いに、性別や性格こそ違うが、服の趣味や考え方・感性が近いといつも感じてきた。
この人生を背負ったのがたまたま自分であった。
その人生を背負ったのがたまたまあなたであった。
そういった視点から社会を見渡すと、人々はある点ではかけ離れ、しかしある部分では酷似している。
経験を偽装する。存在を偽装する。対外的に別の人間に成り代わる時間を持つことの難易度は、今の社会においてはとても低くなっている。
しかし一方で、他者が他者へ無責任に共感して代弁するような行為への非難は相次いでいる。
私が私でしかないことの何と貧しいことか。私と私でないあなたとの境界は、私たちが思うよりももっと曖昧で、ある時は消えて無くなってしまいうる。
プロフィール
伊藤 颯 / ITO Hayate
東京工芸大学 写真学科4年
写真を主に立体物や音声などのメディアを使い作品を制作している。
プロフィール
宮﨑 葵衣 / MIYAZAKI Aoi
東京芸術大学 学部4年
自我と忘我についてを映像を用いて表現している。
都市における人と人の関係性の再定義を行えないだろうか、という視点で、受容・支配・誤解についての作品を制作している。
「Crossing」伊藤 颯、宮﨑 葵衣
2019年7月4日(木)〜9日(火)
12:00〜20:00 ※最終日17:00まで