展覧会概要
レリーズの衝動。
途絶えぬ耳鳴りのなかで妙なる響きを捉える。
飛来していた光の粒が銀の粒子になるとき、
あの時以上に神経を沸き立たせる調べ。
長い間次なる響きを求め彷徨っている。
この繰返し。
-内藤 明
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銀塩写真において、フィルム上に形成される像とは、被写体に触れた光に他ならない。そして、ネガポジ法のプリントプロセスにおいては、そのフィルムを透過した光により印画紙上に像が現れる。印画を見る私たちに届く光は、かつてここではない場所で被写体に触れた光とどのような関係があるのだろうか。さまざまな物質に媒介されながら光を遠くへと届けようとすること。
写真の記録性とは、写真自体に深く刻まれた宿命だ。
内藤明は化学的な反応や、光学的な原理によって生成される銀塩写真の極めて即物的なあり方に深い造詣と探究心を持ち制作を行う。内藤の写真に焼きついた深い闇と眩しい光は、印画紙上の銀の粒子が束の間、見る者に呼び起こす幻視でもある。
しかし「いまこの場所で」が「かつてここでない場所で」になろうとも、たとえかつては触れることのできた笑顔が一枚の紙になろうとも、人はある瞬間を留めようとする。ある瞬間の忘却に抵抗しようと試みる。人の肉体よりもはるかに長い時間を耐えうる銀という物質、その輝きは人間が失うことのできないsentimentだろうか。
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プロフィール
内藤 明 / NAITO Akira
写真家
略歴
1948年東京都生まれ
1972年東京写真大学短期大学部写真技術科 卒業
1973年東京写真大学短期大学部研究生 修了
1985年東京工芸大学短期大学部 講師
2005年東京工芸大学芸術学部 教授
2008年東京工芸大学芸術学部長
2013年日本写真芸術学会 会長
2014年東京工芸大学 退職
東京工芸大学 名誉教授
個展
2015 | 「in the wind」(スタイケントーキョー / 東京) |
2014 | 「light」(スタイケントーキョー / 東京) |
2006 | 「真昼」 (アートスペースモーター / 東京) |
1979 | 「真昼」 (アートスペースモーター / 東京) |
受賞
2010 | 日本写真学会 功労賞 |
著書
2006 | 「デジタル写真の基礎」(共著/コロナ社) |
2001 | 「ファインイメージングとディジタル写真」 (日本写真学会出版委員会編 共著/コロナ社) |
2000 | 「ディジタル写真入門」(共著/コロナ社) |
1997 | 「デジタルスチルカメラの開発」(共著・監修/トリケップス) |
1991 | 「実務者のためのカラー写真」(共著/共立出版社) |
1984 | 「写真大辞典」(共著/講談社) |
1977 | 「写真工業別冊 写真処方の特性と効果」(共著/写真工業出版社) |
ほか |
内藤明個展「echo」
2017年3月2日(木)~3月14日(火)
OPEN:12:00~20:00 ※水曜日休廊、最終日17:00まで
オープニングレセプション:2017年3月3日(金)19:00〜21:00
フォルケッタ高田馬場店にて。