内藤明写真展「once」

2018年12月5日(水)〜11日(火)

展覧会概要

あの時遭遇した情景が
フィラメント状の銀による記録として再現される時、
あのとき以上に心が掻き立つ。
この妙なる調べ。

この感傷。

−内藤明

===

 写されているのは、取り立てて風光明媚や、奇観とも言い難い場所である。
自然と人工物を共に見出すようなイメージが殆どではあるが、その在り様に厳密な一貫性があるわけでもない。
ある特定の被写体に強い拘りを持つわけでもなく、何らかの概念や思考の形象化でもないとすれば、内藤明はなぜ写真を撮影するのか。

 提示されるイメージは、光が濃度をもつ、と形容することが過言とは思えない端正な階調に満ちてはいるが、それは、レンズの前の光を遍く捉え、再現したその結果などではない。
画面の内の一部を指し示すように、限られた部分に多く光を留めるそれらイメージは、矩形の均質な平面により自ずと成立しているかのような「風景」というよりも、人間の眼差しに限界づけられた「眺め」と呼ぶことこそ相応しいのではないか。

 そうした「眺め」の物化ともいうべき写真は、内藤が繰り返し綴る「衝動」という言葉とどのように結びついているのか。
撮影行為のトリガーとなる衝動が何に起因するのかを、内藤は言葉によっては明らかに示さない。
そこに一貫した美的関心が存在することは印画から見て取れるが、むしろ、過ぎ去った後には語り難いものとして、衝動という一語が選択されたのだろう。
眼前の事物との(被写体に触れた光との)衝突的な出会いは、フィルムの露光というメカニズムと重ね合わされ、痕跡のように可触的に残される。
衝動としてシャッターをレリーズする行為が内包する、受動性と能動性の分かち難く混淆し、「世界」と「私」が「在る」と同時に発声するような地点が、かつて確かに存在したことを、写真は証し立てている。
過ぎ去った瞬間を今へと媒介する印画の存在こそが、そのような地点を内藤の内に感傷を伴って感覚せしめる。
不可視の潜像が、現像という過程を経て銀量を増幅し、やがて可視的になるように。

−Alt_Medium


プロフィール

内藤 明 / NAITO Akira

写真家


略歴

1948東京都生まれ
1948東京写真大学短期大学部写真技術科 卒業               
1973東京写真大学短期大学部研究生 修了
1985東京工芸大学短期大学部 講師
2005東京工芸大学芸術学部 教授
2008東京工芸大学芸術学部長
2014東京工芸大学 退職
2013-17日本写真芸術学会 会長
現在東京工芸大学 名誉教授

個展

2017「echo」(Alt_Medium / 東京)
2015「in the wind」(スタイケントーキョー / 東京)
2014「light」(スタイケントーキョー / 東京)
2006「真昼」 (アートスペースモーター / 東京)
1979「真昼時」 (新宿ニコンサロン / 東京)

受賞

2010日本写真学会 功労賞           

著書

2006「デジタル写真の基礎」(共著/コロナ社)
2001「ファインイメージングとディジタル写真」(日本写真学会出版委員会編 共著/コロナ社)
2000「ディジタル写真入門」(共著/コロナ社)
1997「デジタルスチルカメラの開発」(共著・監修/トリケップス)
1991「実務者のためのカラー写真」(共著/共立出版社)
1984「写真大辞典」(共著/講談社)
1977「写真工業別冊 写真処方の特性と効果」(共著/写真工業出版社)
ほか

内藤明写真展「once」

2018年12月5日(水)〜11日(火)
12:00〜20:00 ※最終日17:00まで


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