展覧会概要
タイトルの「WOVEN」とは、織られた、編み込まれた、という意味です。
私がシャッターを切ると、液晶ファインダーの中で世界は停止します。しかし、ファインダーから目を離すと、私は世界が相変らず持続しているのを見ます。キラキラと光っている葉っぱに目が入ったそのすぐ後に、離れたところにある苔を包む柔らかい光に目がいき、そしてすぐにまた別のところに視線が移る。「瞬間あるいは時間がそれらの現れ方にかかわってくるまで」*1 少し歩き、遠くを見る、近くを見る。私が感じる〈いまここ〉には、時間の持続、空間の広がりや奥行きの心地よさ、多幸感のようなものが含まれています。私の眼はさまざまなものを探索して、点から点へ、ここからむこうへ、壁から壁へ、写真から写真へ、ページからページへ動きます。「私が物に追いつき、物に到達しうるためには、それを〈見る〉だけで十分なのであって、見るということが神経機構の中でどのようにして起こるのかなどということは知らなくてもかまわない」*2 のです。
過ぎ去るものであるからこそ普遍的に存在する、一回的で持続的な不可思議な遠さ。空間と時間の織りなす不可思議な織物としての〈いまここ〉──そんな感覚を私は表現したいと考えています。
*1 ヴァルター・ベンヤミン『図説 写真小史』、筑摩書房、2019年
*2 M.メルロ=ポンティ『眼と精神』、みすず書房、1988年(1966年初版)
プロフィール
菊地 真之 / KIKUCHI Masayuki
横浜国立大学教育学部美術科卒業
京都芸術大学通信制課程美術科写真コース卒業
京都芸術大学大学院芸術研究科(通信教育)芸術専攻修士課程写真・映像領域在学中
Website
https://kikuchimasayuki.studio.site/
菊地真之 写真展
「WOVEN」
2024年2月23日(金)~2月28日(水)
12:00〜19:00 ※最終日17:00まで