展覧会概要
いつもの振る舞いを制限され、他者にも容易には会えなくなったことで、その頃のわたしは憂鬱な気持ちを抱えていた。ひとりになれる場所がほしくて、静かな場所の古い家屋の中に小さな部屋を借りた。それはひどく寒い季節が始まる頃の話で、次の寒い季節が来るまで続いた。ここに並ぶのはその部屋を訪れてくれた人物、そして同じ時期に出会った風景と事物のポートレイトである。
部屋の訪問者たちとは初対面で、まずは挨拶を交わし、穏やかな雰囲気の中で撮影が始まる。そこには少しばかりの緊張と居心地の悪さも交じっていただろう。撮影のあいだも色々な話をする。まるで短い物語を聞くかのような時間もあった。しかし誰かのことを思い出そうとする時に思い浮かぶのは、耳底に沈む声の響き、瞬きひとつで移ろう表情の行方、あるいは窓から差し込む光が床の表面に残す、体温にも似た温かさだ。それらはあまりに微細な事柄で、曖昧で、日常生活の中で掻き消されてしまう他者の感触を含んでいる。必ずしも写真に記録されるわけではないそれらが、見る人の中で呼び起こされたら良いと思う。
プロフィール
波多野 祐貴 / HATANO Yuki
2009年 同志社大学文学部英文学科卒業
2018年 勇崎哲史氏主宰 写真ワークショップ「FRAGMENTS 6」参加
個展
2022 | 「隠れてはない 見えていないだけ」(PHOTO GALLERY FLOW NAGOYA / 名古屋) |
「接触と沈殿」(STUDIO TSUKIMISOU / 京都) | |
2021 | 「Call」(TOTEM POLE PHOTO GALLERY / 東京) |
2020 | 「Call」(gallery 176 / 大阪) |
「Unveil」(gallery 176 / 大阪) |
主なグループ展
2020 | 「2019年度 ヤング・ポートフォリオ展」(清里フォトアートミュージアム / 山梨) |
2018 | 「FRAGMENTS 6」(沖縄県立博物館・美術館1F県民ギャラリー / 沖縄) |
受賞歴
2021 | 第24回写真「1_WALL」審査員奨励賞 小原真史氏選 |
2020 | 第22回写真「1_WALL」審査員奨励賞 姫野希美氏選 |
第1回 THE BACKYARD主催PITCH GRANT ファイナリスト |
パブリックコレクション
清里フォトアートミュージアム
波多野祐貴 個展「接触と沈殿」
2025年2月28日(金)~3月5日(水)
12:00〜19:00 ※最終日17:00まで