展覧会概要
篠田優は1986 年生まれ、長野県出身。
現在は東京を拠点に活動する写真家です。
本展覧会「on the record|建築とその周囲」では2017年、長野県信濃美術館で発表された「Voice(s)」から継続して篠田が撮影している、美術館内部やその周囲をとらえた写真を発表します。
「Voice(s)」から一貫して篠田は、建設当初に撮られる竣工写真のような、理想的な建築物の姿を後世へと残すことを目的とした記録を行なうのではなく、窓や椅子といった、建築の実際的な機能を担う部分を記録することに集中してきました。
篠田がとらえてきた事物は、理想としての美術館の姿からは省かれてしまうような、しかし、美術館を構成し、その機能を可能にしている存在です。それらを撮影して組み合わせることは、公的で「大きな」記録の欄外に、私的で「小さな」記録を書き込もうとするような試みともいえるでしょう。
また、篠田は撮影することに随伴して、場所の印象と自らの撮影行為を素描するようなテキストも書き記しています。そのテキストは自らの撮影行為を振り返るとともに、そのときに写し得なかったものを覚えておくためのメモのようでもあります。
そのような写真やテキストから構成される本展覧会が、また同時に、写真を用いた記録行為の可能性や限界を、地道に問うものとなることを、篠田は期待しています。
どうぞご高覧ください。
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本展覧会を構成する写真は、2017年に閉館し、その後に取り壊された長野県信濃美術館の旧本館内部とその外周部で撮影したものです。
美術館としての役目を終えた建築は、それまで張り巡らされていた規律が解かれたような、奇妙に弛緩した空気に包まれていました。その静けさは、やがて始まるはずの解体を前にして、束の間に生じた凪の時だったのかもしれません。
美術館と瓦礫の汽水域にあらわれたものたち。公的な記録の眼差しにとっては圏外に位置するようなそれらに、私は偶々、立ち会ったのです。
―篠田 優
プロフィール
篠田 優 / SHINODA Yu
1986年長野県生まれ、現在東京都在住
2010年上智大学 経済学部 経営学科 卒業
2013年東京工芸大学 芸術学部 写真学科 卒業
個展
2020 | 「抵抗の光学」(リコーイメージングスクエア東京 / 東京) |
「wakes」(表参道画廊 / 東京) | |
2019 | 「text」(Alt_Medium / 東京) |
2018 | 「航跡図」(Alt_Medium / 東京) |
2017 | 「See / Sea」(ニコンサロン / 東京・大阪) |
「ひとりでいるときのあなたを見てみたい」(Alt_Medium / 東京) | |
「写真へのメモランダム」(Alt_Medium / 東京) | |
2016 | 「Medium」(trace / 京都) |
「Medium」(ビルドスペース / 宮城) | |
2015 | 「Medium (six or forty photographs)」(平間写真館 TOKYO / 東京) |
グループ展
2020 | 「imshow」(Alt_Medium / 東京) |
2017 | 「信濃美術館クロージング ネオヴィジョン新たな広がり」(長野県信濃美術館 / 長野) |
2016 | 「(PERSONAL)DOCUMENTS PROJECT」(Gallery Sijac / 韓国)ほか |
受賞
2013 | 塩竈フォトフェスティバル写真賞 大賞 |
東京工芸大学写真学科賞 | |
2012 | EINSTEIN PHOTO COMPETITION X2 岩渕貞哉賞 |
出版
2020 | 『二つの半島に関するメモランダム』(sign and room) |
2015 | 『Medium』(塩竈フォトフェスティバル) |
Website
篠田優個展「on the record|建築とその周囲」
2020年7月9日(木)〜7月21日(火)
12:00〜20:00 ※水曜日休廊、最終日17:00まで