展覧会概要
本展は、主に”Yard Art”と呼ばれる奇妙な庭や軒先を記録したイメージで構成されます。
“Yard Art”(以下ヤード)とは、缶や瓶、DIY、人形などによって精巧に装飾された路上のディスプレイを指します。
それは例えば奇抜なラブホテルや商品が陳列されたアンティークショップなどではなく、あくまでも一般的な人々の住み家で構築されたものです。
5年ほど前からピザ配達のアルバイトをしている作者は、配達圏内である東京と埼玉を中心とした郊外で多くのヤードを見かけてきました。
建物全体が怪獣や猫やアヒルのフィギュア・浮き輪・西洋像に囲まれたブルーの集合住宅。
座席に住人の免許証の巨大コピーと「幸運」と書かれたシールが貼りつけられた軽トラックの周りに富士山の写真がグレーの外壁に一列に並んだ一軒家。
「ありがとう」「花竜二がんばってる」「音楽をやってることは幸せ」「なかなか普通になれないね」など書かれた大量の段ボールに囲まれたビーナス像と土星が描かれた絵画が置かれた美容院、など。
それらの多くは住人の個人的な趣味や近所の子供を喜ばせるため、あるいは空き巣対策であると聞きますが、ただ彼らの装飾にはどこか常軌を越した几帳面さがあるように思えます。
それらは栄久庵憲司が『道具の思想-ものに心を、人に世界を』(PHP研究所、1980年)で「道具は人間のうつしみであり、人間の鏡」と書いたような、住人自身の欲望や観念が直にあらわれた光景とも言えるでしょう。
繰り返す配達のなかでそのような興味を抱いた作者は、仕事が終わった深夜にストロボを用いてヤードの撮影を始めました。多くの細部が写されたそれらのイメージは、事物が延々と行き当たりばったりに積み重なっていく、「つみあげうた」のような〈状態〉と〈状況〉であります。
この機会にどうぞご覧ください。
プロフィール
前川光平 / MAEKAWA Kohei
1993年、東京生まれ。
日本大学芸術学部写真学科中退。
金村修ワークショップ、海原力ワークショップを経て、現在ピザ配達のアルバイトをしながら作家活動をしている。
グループ展
2021 | 「ヤングポートフォリオ2020展」(清里フォトアートミュージアム / 山梨) |
2017 | 「VISUAL COMMUNICATION EXHIBITION」(茨城県つくば美術館 / 茨城) |
収蔵
清里フォトアートミュージアム
インタビュー
ROADSIDERS’ Weekly(2021年1月6日号)
『サバービア・ガーデニングーー前川光平「yard」を見て』
前川光平 個展「隣の芝は青い」
2021年10月14日(木)~26日(火)
12:00〜20:00 ※水曜日休廊、最終日17:00まで