展覧会概要
長崎県の離島出身の作家・田川基成は、自身のルーツとその後の移動や旅の経験を通し、移民と文化、土地と記憶、信仰などに関心を持ち写真作品を制作してきました。2016年頃から故郷・長崎に目を向けて撮影を続けるシリーズは、展覧会「見果てぬ海」(2020〜2021)や写真集『見果てぬ海』(赤々舎、2020)として発表されています。
本展では、未発表の新作写真から、長崎の海岸と島々を巡り撮影された海の風景=SEASCAPESを主題とし構成されます。作家は4年ほど前、幼少期より遠く西の海の向こうに眺めていたという五島列島の無人島に、海を渡って初めて訪れることになりました。その島の高台から見た光景は、遠く東の海に自身が育った島を見渡すことができ、「風景が反転してしまった世界、あるいはパラレルワードに渡って来たかのような不思議な知覚」を得たのだと言います。同時に田川は、「海の向こうを見る者はまた、海の向こうからも見られていた」という事実にも気がつき、以来、そのことを意識しながら撮影を行ってきました。また、約600もの離島が存在する長崎の海は、間に海を挟んで「見る、見られるを延々と繰り返す環世界」だと田川は表現しています。本作「NAGASAKI SEASCAPES」は、海を見る、海から見られることの関係性を表し、「人はなぜ海を渡るのか」という根源的な問いを立てる試みでもあります。
Alt_Mediumにおいては、長崎の「土着のキリスト教会」のありようをテーマとし昨年開催された展覧会「Vernacular Churches」に次ぐ2回目の展示となります。
プロフィール
田川基成 / TAGAWA Motonari
1985年生まれ、長崎県西海市の離島出身
北海道大学農学部森林科学科卒業
移民と文化、土地と記憶などに関心を持ち作品を制作している。
個展
2021 | 「見果てぬ海」(Gallery Esse / 札幌) |
「見果てぬ海」(コクラヤギャラリー / 長崎、Nikon Plaza The Gallery / 大阪) | |
2020 | 「見果てぬ海」(Nikon Plaza The Gallery / 東京) |
「Vernacular Churches」(Alt_Medium / 東京) | |
2019 | 「ジャシム一家」(Nikon Salon / 大阪) |
2018 | 「ジャシム一家」(Nikon Salon / 新宿、札幌市教育文化会館 / 北海道) |
2017 | 「ジャシム一家」(Nikon Salon / 銀座・大阪) |
グループ展
2020 | 写真展「ニッポン複雑紀行」(アイデムフォトギャラリーシリウス / 東京) |
2016 | 「Photobook as Object」(Reminders Photography Stronghold / 東京) |
「Between the Rivers」(東川国際写真フェスティバル / 北海道) |
受賞
2018 | 第20回三木淳賞 |
出版
2020 | 『見果てぬ海』(赤々舎) |
Website
https://www.motonaritagawa.com/
田川基成 写真展「NAGASAKI SEASCAPES」
2021年11月11日(木)~16日(火)
12:00〜20:00 ※最終日17:00まで