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どこに置き忘れたか思い出せなかった眼鏡は、職場の椅子の上にあった。いつもそんなところに置く訳ない場所にあったのだ。その時、必然があったから置いたのか?いや、どこに置き忘れたか思い出せないのだから無意識に置いたのだろう。置く場所が無かったからだろうか。いつもなら眼鏡が無いと不自由を感じるはずなのに、不自由を感じることなく、職場を離れた。眼鏡の不在による違和感は唐突にやってきて、世界が見えにくくなったのか、眼鏡の存在が大きくなる。脳内で行動を逆回転再生し、眼鏡の所在を探す。それでも見つからないので、脳内再生しながら身体を使い過去を追体験する。しかし、見つからない。脳内再生や身体的行為として探しても見つからないのは、過去に戻るのではなく未来に向かい新しい動線を描いているからだろう。つまり、無意識下に置ける物の喪失は、記憶不在であり、無かった・無いという現時点での事実だけが見えている。顔の一部とも言われることもある眼鏡の存在は、他者にとっては個を分類するマークとなる。ゆえに、分類マークが消えたとき、長年見慣れたはずであった他者の顔が、見知らぬ他者の存在になり動揺する。見慣れたカタチに安堵したいが為に、無くした本人ではなく他者が探し始める。無意識下に置かれた物に向かい、眼鏡の所有者の行動を想像し逆再生をイメージして探す。知り合いだったはずの顔から眼鏡が無くなった見知らぬ他者、その見知らぬ他者の行動を想像する。置き忘れの所在は、偶発的に置き忘れられたのか、無意識的に置かれたのか、または、見えざる第三者の手で動かされたのか。複数人が無くした人の行動を想像し探索しても見つからなかったのだが、外から来た新しい他者によって発見された。職場を知る者にとっては、見慣れた風景の中に存在すると言われた眼鏡を探し、職場ではない者にとっては、全てが新しく発見の連続の中で探す。見慣れない者にとっては、見慣れた眼鏡の存在が発見しやすいようだった。そして、失踪していた眼鏡は所有者の顔に戻った。その顔は見慣れた風景に戻ったかのように見えたが、どこか同じには見えなかった。
片柳拓子
プロフィール
片柳拓子 / KATAYANAGI Takuko
東京生まれ、文化女子大学金工卒業
カロタイプ タカザワケンジゼミ
金村修ワークショップ
海原力ワークショップ
個展
2022 | 「Boundary」(PHOTO GALLERY FLOW NAGOYA / 愛知県) |
「impersonation」(Alt_Medium / 東京) | |
2021 | 「possession」(IG Photo Gallery / 東京) |
グループ展
2022 | 「神奈川県美術展」(神奈川県民ホールギャラリー / 神奈川) |
受賞
2022 | 「Involve」(神奈川県美術展 写真部門)入選 |
私家版
2022 | 『CLASSIFY』 |
『Involve』 | |
個展カタログ『Boundary』 | |
個展カタログ『impersonation』 | |
2021 | 『filling-in』 |
個展カタログ『possession』 | |
2020 | 『Sensation Potential』 |
2019 | 『MEMO/POINTO』 |
2016 | 『noumi-jima』 |
2015 | 『Go to India』 |
Website
https://takukatayan.wixsite.com/top-takuko
https://twitter.com/takukatay4
https://www.instagram.com/takupo3915/
その他
会期中である2023年4月8日(土)には片柳拓子(写真家)、篠田優(写真家・Alt_Medium)によるトークイベントを開催いたしました。
その様子は下記でお読みいただけます。
https://takukatayan.wixsite.com/top-takuko/relevan-対談ログ
片柳拓子 個展「Relevant」
2023年4月7日(金)~19日(水)
12:00〜19:00 ※木曜日休廊、最終日17:00まで