内山真衣子 個展「産土 Ubusuna」

内山真衣子個展「産土 Ubusuna」

2023年10月6日（金）～18日（水）

展覧会概要

産土　Ubusuna
この作品は、2014年から2018年まで、わたしの生まれ故郷と各地の果樹園を追いかけた記録である。

わたしは埼玉県郊外の白岡市で生まれ育った。親戚が農業を営み梨園を保有していた。4月から5月にかけて受粉作業や実すぐりを時々手伝った。収穫の季節はいつも夏休みと重なっていて、出荷用の箱を祖母や伯父といっしょに組み立てた記憶がある。

海外に拠点を移し日本を離れていた時期もあったが、2013年に帰国。
日本に戻り最初に撮影をしたのがこの梨園だった。当たり前だった風景がなぜか違ってみえた。果樹が、実がなる樹という存在が、とても神秘的に見えた。

自ずとわたしの関心は日本各地の果樹園へと広がり、地方を撮影する旅が始まった。
青森では、りんご農家の主人に、息子が交通事故で亡くなり後継者不在という話を聞いた。瀬戸内海の小さな島で余命半年の高齢男性に出会った。妻に先立たれ自分も癌を患いながら蜜柑を育てていた。この作品を発表するには時間がかかり過ぎた。彼はもうこの世にはいないだろう。

白岡の梨園も2018年に終に閉めることになった。
伐採の当日、目の前で変わってゆく光景にシャッターを切り続けた。樹木を失った土壌はどんどん乾いていく。幹から切り落とされた枝はまだしっかりしているように見えたので、無造作に20本ほど持ち帰り浴槽に水を溜めて枝を浸した。
すると1ヶ月後に蕾がふくらみ始め、季節外れの3月に白い花が咲いた。

わたしは急いで枝を抱えて暗室に入り、最期の花が朽ちゆく瞬間を印画紙に焼き付けた。

プロフィール

内山真衣子 / Maiko Uchiyama

埼玉県白岡市生まれ。一橋大学経済学部卒業。
2006年中央美術学院（中国北京）留学。
2008年同大学写真学科普通進修生修了。
2022年3月京都芸術大学芸術学科（通信制/文芸）修了。
さいたま市在住。

活動歴

2018	「第14回 THE DARKROOM」（銀座渋谷画廊 / 東京）
2015	「かものはしクラブ写真展 vol.2」（ギャラリーコスモス / 東京）
2014	「第20回酒田市土門拳文化賞受賞作品展」（土門拳記念館 / 山形、新宿ニコンサロン / 東京、ニコンプラザ / 大阪）
2005	「SABADO写真展 vol.7」（ギャラリー・ルデコ / 東京）
2004	「SABADO写真展 vol.6」（目黒区美術館区民ギャラリー / 東京）
2003	「SABADO写真展 vol.5」（ギャラリー・ルデコ / 東京）