2023年12月6日
写真家の岩崎美ゆきは東京を中心に活動し、近年は新作による展覧会の開催を着実に重ねています。
本展覧会は2019年の「この海は、泳ぐためではありません」から数えて4回目にあたるAlt_Mediumでの個展となります。
岩崎の作品はデビューより一貫して、直裁に風景を写しとる硬質なストレートフォトグラフィーによって構成されています。
深い被写界深度で撮影された写真は、画面の隅々までピントが合うことにより、かえってそれを見る者の眼差しを画面上に彷徨わせるようです。
また同時に、そのようにして撮られた岩崎の写真には、耳目を集めて特別に名指される土地や景観というよりも、普段には人々が何気なく通過してしまうような光景が写し留められています。
この度発表される写真展「なみまの再会」においても、岩崎は変わらない姿勢で制作に臨んでいます。
岩崎は写真を、単なる事物の写しではなく、見る者の記憶や経験との関係において立ち現れる場のようなものとしてとらえています。
そのとき撮影者と鑑賞者は、分け隔てられることもなく、新鮮にイメージを体験するのです。
平明でありながら、それゆえに言葉しがたい深みを感じさせる作品をこの機会にぜひご覧ください。