2024年3月6日

砂田紗彩 個展「つきのうみ」

⒈ 臍には多様性に富んだ微生物がいる。 生まれ育った土地にはいない、異国の土地でしか見つかったことのない細菌。本来は海底や火山のような極限状態にある場所で生きているはずのバクテリア。なぜ人の臍で見つかったのかわからないものも数多くあるそうだ。 ⒉ 子供の頃罹った病のあと、体に潜んで時折表に顔を見せるウイルス。とっくに忘れてしまった痛みを、神経を焼くようなちりちりとした感覚で思い出させる。 わたしの体のうち、人らしいところは10%しかなく、90%の微細なものとともに体を維持して生きている。体内に潜む不調の原因も、忘却も、揺らぐ原因は多少なりとも私のものではなく、 どこか遠くから、世代を変えながら移り住んできたものの存在で、わたしはここにこうして生きている。この体は地面と等しく微細なものが存在することができる場所である。 遠くどこかに思いを巡らせながら、わたしはわたしの体と、そこに生きている微細なものを写している。