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2022年1月19日

篠田優 写真展「on the record | 海をめぐって」

展覧会概要  篠田優は東京を中心に、展覧会や作品集の出版など精力的に活動する写真家です。太平洋戦争時代に建設された遺構や、取り壊しを控えた公共建築などを主な被写体として、大判フィルムカメラや4K動画による精緻な描写によって、記録性と表現性を兼ね備えた写真・映像作品を制作しています。 本展覧会では、篠田が現在まで継続している東京湾沿岸に取材した写真や映像を組み合わせて発表します。篠田は2015年から、三浦半島と房総半島という東京湾を形成するふたつの土地の沿岸部に残された遺構を訪ね歩き、写真に記録するプロジェクトを現在まで続けています。その被写体の大半が太平洋戦争末期に掘削された壕であり、作者はその内部に残された往時の掘削痕や開口部から見える現在の光景を写真に捉えてきました。 また同時に篠田は、そうした壕や砲台といった遺構、そしてその周囲の様子を高精細な動画で撮影した映像作品も制作しています。そこでは、かつての軍事的な施設が観光地へと変貌したり、草生したりして日常の景色の中へと埋もれている様を客観的に見て取ることができるでしょう。 さらに近年では、京浜や京葉の工業地帯における汀に着目して写 […]
2021年2月9日

岡田翔キュレーション「error CS0246」 Vol.2 − 篠田優個展「ひとりでいるときのあなたを見てみたい」

展覧会概要 現在、篠田優は壕や取り壊される美術館などをモチーフとして、そのモノに蓄積された記憶や記録の痕跡を〈記録〉しています。  今回の展示では、2013年から2016年にかけて撮影された過去作による展示構成を試みています。そこには、篠田が扱うモチーフが物質的な美しさから、現在の記憶や記録の痕跡に纏わるものへと移り変わっていく兆候をみることができます。  自身の過去作を呼び起こし、自己批判も厭わない篠田の写真に対する姿勢は、矛盾をはらみながら変化を遂げる社会に向けて自身をアップデートする試みです。 ===  この度、金村修、小松浩子、篠田優による連続個展「error CS0246」を開催します。いまだ終息の目処が立たない新型コロナウイルスは、私たちの日常生活に大きな変化をもたらしました。感染予防対策として、物理的な接触を避けるために築かれる〈壁〉の存在は、ボーダーレスを標榜して速度を求めてきたグローバリズムをそれ以前へと巻き戻そうとするものです。街の至るところで、密閉空間を避けること、集団にならないことなどの制限が求められ、感染予防対策の強化が続いています。一方、各所で導入されたテレ […]
2020年7月21日

篠田優個展「on the record|建築とその周囲」

展覧会概要 篠田優は1986 年生まれ、長野県出身。現在は東京を拠点に活動する写真家です。 本展覧会「on the record|建築とその周囲」では2017年、長野県信濃美術館で発表された「Voice(s)」から継続して篠田が撮影している、美術館内部やその周囲をとらえた写真を発表します。 「Voice(s)」から一貫して篠田は、建設当初に撮られる竣工写真のような、理想的な建築物の姿を後世へと残すことを目的とした記録を行なうのではなく、窓や椅子といった、建築の実際的な機能を担う部分を記録することに集中してきました。篠田がとらえてきた事物は、理想としての美術館の姿からは省かれてしまうような、しかし、美術館を構成し、その機能を可能にしている存在です。それらを撮影して組み合わせることは、公的で「大きな」記録の欄外に、私的で「小さな」記録を書き込もうとするような試みともいえるでしょう。また、篠田は撮影することに随伴して、場所の印象と自らの撮影行為を素描するようなテキストも書き記しています。そのテキストは自らの撮影行為を振り返るとともに、そのときに写し得なかったものを覚えておくためのメモのようで […]
2020年2月25日

「imshow」

展覧会概要  本展「imshow」は、写真、インスタレーションなどの表現からなる展覧会です。現在、「写真」という映像メディアはデジタル化やソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の発展に伴い、写真家だけではなく多くの人にとって親しみやすいメディアのひとつとなりました。  写真は、基本的にはレンズが光を集約することで結ばれた像を切り取り、印画紙に焼き付けたものです。その際にレンズを対象へ向けるフレーミングは、写真家にとって技術であり思考そのものとして扱われてきました。そのため、フレーミングという行為は、撮影においては「画角」、編集では「トリミング」、「マスク」などそれぞれの段階で取り組まれます。つまりそれは、撮影時や編集時においても常に世界をどのように切り取るのかを重要視してきたことの表れです。  本展覧会名である「imshow」とは、コンピューターでイメージを表示させる際に用いるプログラミング言語です。本展では作家がどのように世界をみて、切り取り、またはどのようにイメージを作品として受け入れるのかという点に着目して、作品とドキュメントから展示空間を構成しています。  本展はこの […]
2020年1月14日

Alt_Medium特別展示

展覧会概要 Alt_Mediumでは2020年最初の展示として、篠田優が今まで別会場での展覧会で出展した作品や、2020年1月20日(月)から2月1日(土)まで表参道画廊(東京)で開催される個展へとつながる作品群を展示しています。 よろしければどうぞお越しください。 【開廊時間】*本展覧会は特別展示につき、開廊時間は13:00〜19:00となっておりますのでご注意ください。
2019年11月12日

喜多村みか 写真展「TOPOS」

展覧会概要 喜多村みかは1982年福岡県生まれの写真作家で、2008年東京工芸大学院芸術学研究科メディアアート専攻写真領域を修了。 喜多村は主にスナップショットという技法を使用し、非常に身近でありながら少し距離感がある、どこともいえない世界を切り取ります。その様子は作家自身のというよりは作家の前に広がる風景の身じろぎのようであり、絶え間なく揺らぐ世界の隙を捉えたかのようでもあります。 今回発表される「TOPOS」は「VOCA展2019現代美術の展望─新しい平面の作家たち─」において山峰 潤也氏(水戸芸術館現代美術センター学芸員)より推薦を受け出品され、大原美術館賞を受賞した作品です。本作品で喜多村は、自身が中学生時代を過ごした長崎と、それまで直接的には縁のなかった広島を定期的に通い撮影しています。そのある年、喜多村は長崎でも、広島でもない場所で平和記念式典のテレビ放送の様子を撮影。その写真を後日眺めていたときに感じた”遠くのどこか”を眺める行為について思いを巡らせたことが本作へと繋がります。 喜多村は、今、自身の写真について「すべての場所に言えるのは、そこは何かが起こった後であり、何か […]
2019年3月12日

篠田優個展「text」

展覧会概要 長野県信濃美術館は1966年に開館した。半世紀を経て、その本館は美術館としての役目を終えた。残雪の土地で光に照らされるその姿を、もはや見ることはできない。僅かな枚数の写真と数時間分の映像が、いまとなっては恥ずべきものでもある、私の美意識という名の選別を通り抜けて残された。あの場所で何が可能であったのか、ここから何を語り得るのか。その後(跡)を生きる者にとっての責務として、私は少しずつでも考えてみたいのだ。
2018年7月10日

篠田優写真展「航跡図」

展覧会概要 篠田優は東京を拠点に活動する写真家です。本展では2017年、銀座ニコンサロン、大阪ニコンサロンにて発表された「See/Sea」から継続して撮影されている、三浦・房総という二つの半島に残された、海防のための遺構を主なモチーフする写真群の新作を発表いたします。 江戸・幕末期の砲台跡や、太平洋戦争時の洞窟陣地を巡る作者の歩みは、現在の土地における水平的な移動とともに、大海のような深みを持つ歴史を垂直的に重ね見る、旅のようです。本展「航跡図」は、その軌跡を示す、現在進行形の写真群やテキストによって構成されます。 どうぞご高覧ください。 −Alt_Medium === 洞窟の中ほどには幾つもの石が在った。そのどれもが、開口部からの光をその半面に受けていた。正午を迎えようとする太陽の光は、砲台跡に、草木の影を黒々と落とした。積層を貫くように、光によって繋がれているのだろうか。 −篠田優
2017年6月27日

篠田優個展 「ひとりでいるときのあなたを見てみたい」

展覧会概要 篠田優は日本で活動している写真家です。 2013 年の塩竈フォトフェスティバル写真賞大賞を受賞し、その副賞として2015年には写真集「Medium」を発行しました。 それに伴い東京を皮切りに、関西や東北、海外での展示活動も精力的に行っています。 また2016年よりオルタナティブスペース「Alt_Medium(オルトメディウム)」を立ち上げ、運営に参加しています。 本展覧会「ひとりでいるときのあなたを見てみたい」では、事物やそこに絡み合う光を直截に捉えた写真とともに、篠田によって綴られたテキストが展示されます。 それらは互いに反響し、写真やそれを見る者の在り方を静かに問います。 この機会に是非ご覧ください。 −Alt_Medium === :光が刻一刻と変化する。私の網膜に結ぶ像は静止しない。かつてあった光の物象化は、全てが変化し、失われていくことを伝える。 :光の触知としてあなたが在った。 篠田優「ひとりでいるときのあなたを見てみたい」より
2017年1月15日

篠田優 写真展「写真へのメモランダム」

展覧会概要  篠田優は日本で活動している写真家です。2013 年の塩竈フォトフェスティバル写真賞大賞を受 賞し、その副賞として 2015 年には写真集「Medium」を発行しました。それに伴い東京を皮切り に、関西や東北、海外での展示活動も精力的に行っています。本展覧会は篠田が運営に関わるオル タナティブスペース Alt_Medium(オルトメディウム)においての開催となります。 本展覧会「写真へのメモランダム」において篠田は自身の手による文章を写真と共に展示します。 篠田は日々の中で写真を撮ると共に、写真についての思考をいくつもの手帳に綴ってきました。常 に写真と言葉の両者を用いて写真への問いを続けてきた篠田にとって、その両者を同じ空間に存在 させることは自然な流れでもありました。篠田はそれについて「よりリアリティのある在り方へと向かう試み」と述べています。 この機会にぜひご高覧ください。 Alt_Medium ===  私の内にあらわれるイメージは何かの姿をもった像(figure)であるように思う。 ときにその像は直接的に現実の存在を参照しないだろう。私は夢の中で誰とも呼べない人、 […]