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2022年6月1日

assignments 「WRITING PHOTOS」

展覧会概要 assignmentsは5人の写真家と1人のグラフィック・デザイナーから成るグループです。私たちは、ある写真家が主催するワークショップで出会いました。ワークショップは数年間のうち、違う空間、違うタイトルで数回開催されましたが、コンセプトは共通して「みんなで写真を考える」ことでした。毎回、出される課題に取り組み、写真について考える、そんな経験をかつて共有した者たちがコロナ禍で再び集まりました。普段は個々で活動する傍ら、assignmentsでは「グループだからできる”課題”」に取り組んでいます。この度の展示では、会うことなく一本のフィルムをメンバーで順番に回しながら撮影する多重露光プロジェクト、また、外出することができない時間に読んだ文学から改めて写真について考えた各々のプロジェクトを発表します。露光を重ねれば重ねるほど透き通ってゆくイメージの中で、目を凝らしてようやく見つけるそれぞれの日常の時間。そしてページをめくればめくるほど魅了されてゆく文学の世界の豊かさを見つける時間。別々の場所にあって個々が過ごした時間と、文学と写真について繰り返した思索を、一つの空間に集め、レイヤ […]
2022年5月18日

酒井結菜個展「のたうちまわる」

展覧会概要 生きていることを強く意識するときはあるだろうか。 忙しなくただ目の前のことをこなす日々では自分が地面にくっついてることも心臓が動いていることも気にすることはないだろう。(気にしていたらやっていけないので気にしない方が良い。) 指を切って初めて自分には指という細く別れたものが生えていて、その中には骨が通り肉が詰まっていて血が流れていることに気づく。 胃が痛くなって初めて自分の中には食べ物が通る袋があることを意識し、位置や大きさまで分かりそうなほどずっと動いて私という存在を生き物として動かしていることを知らしめる。 いつの日からかそんなことに惑わされ気にしないことができなくなり日常生活を送ることがつらくなったが、表現に変えることで、物として外に出すことで、人間であることを受け入れ、諦め、生きることに逆らわないようになった。 私の作品は作品という言葉も似合わないくらいただ私という人間が生きている間に残した跡の蓄積で外に排出したかった何かである。
2022年5月4日

イシダマイ 個展「gauge(2020-2021)」

展覧会概要 ゲージとは自分の編み目の緩さキツさを確認する作業のことを指す。10cm正方の中に縦横何目あるかを数え、自分の編み加減を確認し製図を行う。2020年4月に、新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言が発令された。私は仕事を休み、自宅待機をした。自宅でほとんどの時間を過ごすようになると、コロナ禍における不穏な日々の心と体の拮抗、内的意思とそれに伴う身体活動をログ化したいと思うようになった。 WEBで編み物の効能について調べた。「編み物をすると、脳の血流が増加し、前頭前野が活発に活動する。前頭前野は、想像力やコミュニケーション能力、記憶力を司る。ヒトの思考や創造性を担う脳の最高中枢である」と記載があった。 そこで私は、特別定額給付金10万円を使って毛糸を購入し、2020年4月28日(誕生日)から1年間棒針編みゲージを1日1枚編んで撮影することにした。そして都度撮影した写真 365枚をブロック連結させた。 深夜のテレビでは、信号を測定して品質を保持するために、カラーバーが表示される。自粛生活の中で、このゲージが私のカラーバーとなった。そして、繋ぎ合わせることで 1年間における心身 […]
2022年4月20日

片柳拓子 展「impersonation」

impersonation 到着したら、とりあえず駅前のありふれたカフェに立ち寄り、温かいものを飲む。 温かいものを飲んでいるうちに、少しずつ街に馴染んでいくような気がするのだ。飲み終える頃には、私はその街の住人が着ているような空気をまとう。そして、あたかもその街の住人のような顔をして街を歩きだす。 その街に住んでいないと歩かない路地に迷い込んでみる。というよりも自ら街に迷いに行く。温かいものを飲みながらまとった街の空気は、「近所に住んでいそうな人」もしくは「新しく越してきたかもしれない人」といった立ち位置を演出する。 時折、人に見られている気配を感じて振り返ってみると、人ではなく猫に見つめられて ことがある。猫に見つめられていると思って振り返ると、そこには誰もいない。そこにあるのは物だけで、気配を探してあたりを見回すが、人影も動物の影も見えない。 そこに誰かがいたのかもしれない。しかし、その気配だけが私に触ってくるのである。そして、こちらを向けと囁くのだ。 そのうち自分がどのあたりを歩いているのかわからなくなり途方に暮れる。どこかにランドマークとなるようなものが見えるのではないかと遠 […]
2022年4月6日

Alexandra Eastburn+EETY「Music From A Spiral Corridor」

展覧会概要 本展覧会は、テネシー州メンフィスを拠点に活動するアーティストであるアレクサンドラ・イーストバーンと、東京にて一般社団法人MEWO (メオ)を設立したデザイナーデュオEETYによる作品展です。 イーストバーンはパンデミック下において、 メンフィスの一軒家に籠もり黙々とドローイングを描き溜めては、自身の生活の糧を得るためにSNSを通じて販売していました。彼女にとって、 描くことは自身を癒やすことであり、 薬の役割を果たすもの、自分が今ここにいる理由に意味をもたらすための本能的な方法だと言います。 イーストバーンのアメリカ国外における初めての展覧会となる本展では、両者の出会いのきっかけとなったスパイラル・ドローイング(渦巻きの集まりで構成されたドローイング)の数十点をはじめ、 活動初期のペインティングも展示、 一部販売いたします。また、EETYがコスチュームジュエリーの伝統的な技術「線加工」や「よせもの」の職人と共に、スパイラル・ドローイングを再構築したジュエリーの展示、受注販売をいたします。 本展は一般社団法人MEWO による初めてのプロジェクトとなります。この機会にどうぞご高 […]
2022年3月23日

坂本政十賜 写真展「GENIUS LOCI 東北」

展覧会概要 坂本政十賜は展覧会や写真集のみならず、雑誌紙面を通じても継続的に作品発表をおこなっている練達の写真家です。近年ではアーティスト・コレクティブ「FŪKEI」の一員としても積極的に活動を展開しています。 坂本はキャリア初期から現在まで一貫して、卓抜なフレーミングと瞬間把握によって裏打ちされたストレートフォトグラフィーを基調とした作品を発表してきました。また同時に、そうした写真群は被写体を明瞭かつ正確に写し出すことから、すぐれた記録性を備えているといっても過言ではありません。本展覧会で発表される≪GENIUS LOCI東北≫にもそうした性質が余すことなく含まれています。 しかし、東北地方の家々を撮影した本作の、その実直かつ抑制的な画面からは、ことさらに強調された美的な操作や決定的瞬間を見出すことはできません。むしろ、被写体となった家のまえで静かに佇むという身振りを形象化したかのような寡黙な画面が、本展覧会には数多く出陳されます。そうしたイメージ群からは、東北の各地と坂本とのあいだに紡がれた交感の軌跡を、鑑賞者もまた見て辿ることができるでしょう。
2022年3月9日

ムラタナナ個展「ROUNDUP」

展覧会概要 修士課程修了作品展として人生初の個展を行います。“ROUNDUP”は英語でまとめという意味です。大学4年生から大学院2年通い、卒業するまでの制作まとめとしての展示です。作品も全てその期間に作られたものです。シルクスクリーンやリソグラフなどで制作をしながら”唯一性”とはなにか、考えながら自分らしく制作しました。
2022年2月16日

寺平花 / 中野菜々花 二人展「しゃべってる」

展覧会概要 喋っている時、私たちはそれぞれの生活の出来事を持ち寄っている。得たものを共有したり言い出すタイミングを逃したりする。そこから大きなアイデアを閃くことがあるが、それは奇跡である。私たち2人が同じ空間に作品を置くことはその喋っている状態に近いかもしれない。そのなんでもないやり取りがリアリティと奇跡に繋がると信じている。
2022年2月2日

ルーク・クラウチ 個展「Dirty Butterfly」

展覧会概要 Dirty Butterfly私は最近まで東京で英語講師のアルバイトをしていました。私の生徒たちは、人生におけるさまざまな経験をよく語ってくれました。私はこれらの話を書きとめて集めました。生徒たちの話は、単に経験談として興味深いばかりでなく、日本の文化や歴史を垣間見ることができるものです。 本プロジェクトでは、生徒たちの話をもとに絵画を制作しています。各作品は彼らの言葉を直接引用し題材にしております。私の生徒の多くは自衛隊や航空会社に勤めておられて、ご高齢の方もいます。一番熱心な生徒は日本の自衛隊の一佐です。そのため、戦争、航空技術、飛行などがこの作品の主題となっています。 普段はドローイングや想像を軸に絵画作品を制作していますが、今回の作品の一部は写真を参考にしています。その理由は、描こうとしている出来事を写真以外の方法で目にしたり、 想像だけを頼りに描いたりすることが難しかったからです。しかし、写真のような絵画を描きたいとは思っていません。写真は、あくまで写っているものとは異なるイメージを表現するためのスタート地点として利用するものと捉えています。 === Dirty […]
2022年1月26日

佐方晴登 写真展「Dead. But not dead.」

展覧会概要 近年「事故物件ブーム」がにわかに巻き起こり、それにまつわる商業映画や、小説、ネット記事が数多く制作される様になりました。事故物件なる言葉はブーム以前から存在していましたが、日本人に古くからある意識、不浄の概念の現代版のようであり、現代日本の消費文化と結びついてホラー映画的な一つのカルチャーになりました。 しかし本来、生と死という概念は古くから人類が直面してきた現実的、哲学的な問題であり、資本主義的消費文化が根付く以前は軽々しく扱ってしまう様なテーマではなかったように思います。 私は生と死が一種の商品として市場に流通している事に対し、非常に違和感を感じてきました。思えば、子供の頃から慣れ親しんできた正義と悪の戦いの物語、感動的な死… 日本から遠く離れた紛争、それに巻き込まれて死んでいった子供達… そういった類のエンターテイメントやニュース番組を日々消費する事で本来の死の匂いから遠ざかっていく感覚がありました。虚構の死に感動し、遠い世界の紛争に心を痛めては、直後に流れるCMやグルメ番組に気を取られて忘れてしまう。身近に存在するはずの生と死を感じる事なく、不自由ない生活をおくる。 […]
2022年1月19日

篠田優 写真展「on the record | 海をめぐって」

展覧会概要  篠田優は東京を中心に、展覧会や作品集の出版など精力的に活動する写真家です。太平洋戦争時代に建設された遺構や、取り壊しを控えた公共建築などを主な被写体として、大判フィルムカメラや4K動画による精緻な描写によって、記録性と表現性を兼ね備えた写真・映像作品を制作しています。 本展覧会では、篠田が現在まで継続している東京湾沿岸に取材した写真や映像を組み合わせて発表します。篠田は2015年から、三浦半島と房総半島という東京湾を形成するふたつの土地の沿岸部に残された遺構を訪ね歩き、写真に記録するプロジェクトを現在まで続けています。その被写体の大半が太平洋戦争末期に掘削された壕であり、作者はその内部に残された往時の掘削痕や開口部から見える現在の光景を写真に捉えてきました。 また同時に篠田は、そうした壕や砲台といった遺構、そしてその周囲の様子を高精細な動画で撮影した映像作品も制作しています。そこでは、かつての軍事的な施設が観光地へと変貌したり、草生したりして日常の景色の中へと埋もれている様を客観的に見て取ることができるでしょう。 さらに近年では、京浜や京葉の工業地帯における汀に着目して写 […]
2021年12月21日

川名晴郎 個展「雪」

展覧会概要 主に日本画材を用いて制作した平面作品7〜10点による展示です。自分の中には日常的に目にしているものと、メディアを通して触れるイメージが存在しています。それらを絵の中で混ぜ合わせることで、自分が感じている空気のようなものが展示空間にも流れたら良いなと思います。