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2021年10月26日

前川光平個展「隣の芝は青い」

展覧会概要 本展は、主に”Yard Art”と呼ばれる奇妙な庭や軒先を記録したイメージで構成されます。 “Yard Art”(以下ヤード)とは、缶や瓶、DIY、人形などによって精巧に装飾された路上のディスプレイを指します。それは例えば奇抜なラブホテルや商品が陳列されたアンティークショップなどではなく、あくまでも一般的な人々の住み家で構築されたものです。 5年ほど前からピザ配達のアルバイトをしている作者は、配達圏内である東京と埼玉を中心とした郊外で多くのヤードを見かけてきました。 建物全体が怪獣や猫やアヒルのフィギュア・浮き輪・西洋像に囲まれたブルーの集合住宅。座席に住人の免許証の巨大コピーと「幸運」と書かれたシールが貼りつけられた軽トラックの周りに富士山の写真がグレーの外壁に一列に並んだ一軒家。「ありがとう」「花竜二がんばってる」「音楽をやってることは幸せ」「なかなか普通になれないね」など書かれた大量の段ボールに囲まれたビーナス像と土星が描かれた絵画が置かれた美容院、など。 それらの多くは住人の個人的な趣味や近所の子供を喜ばせるため、あるいは空き巣対策であると聞きますが、ただ彼らの装飾 […]
2021年10月12日

寺崎珠真個展「Heliotropic Landscape」

展覧会概要 寺崎珠真は鋭敏な感性で風景を主題とする若手写真家です。 寺崎は武蔵野美術大学を卒業した後、東京を中心に個展やグループ展、写真集の発刊など実直に発表を重ねてきました。その清新な写真群は、「自然」を単に我々の外部的な存在として単に措定するのではなく、人間や人間の活動をもその内に含み込むものとしてそれを観るような懐の深いパースペクティブに裏打ちされたものです。本展覧会では作者自身が木々の間に分け入り、精細に捉えた新作を発表いたします。 === 現在の主な探査活動の場は樹林帯へと移った。茂みの中を歩き回ると、視点の定まらないめまいのような不安感があるがずっと浸っていたい心地よさもある。錯雑の中にあっても陽は昤々として降り注ぎ、絡まり合った枝葉は反照し渾然としたものたちのざわめきが聞こえてくる。そんなとき透かさずシャッターを切ると、自ずと風景が立ち現れる。 − 寺崎珠真
2021年8月24日

桑沢デザイン研究所 羽金知美ゼミ展「日々続く道」

展覧会概要 この度桑沢デザイン研究所 羽金知美ゼミによるグループ展「日々続く道」を開催いたします。私たちの人生は先の見えない長い道です。私たちは3年間という学生生活のほとんどを2020年から続く異常な日々の中で過ごすことになりました。しかし写真を撮っていく中で、目の前にある日常の些細なことの積み重ねが私たちそれぞれの道を紡いでいることに他ならないと考えるようになりました。 今起きていることもいずれは長い道のりの途中で起きた些細な出来事になるのかもしれません。私たち7名が歩み続ける中で見つけた軌跡をご覧ください。
2021年8月17日

姫野顕司 個展「PERSEUS」

展覧会概要 姫野顕司は東京を中心に活動する写真家であり、本展覧会が姫野にとってはじめての個展となります。 これまで実直に街区での撮影活動を続けてきた姫野ですが、そうした活動はつねに写真という媒体への問いによって裏打ちされてきたといえます。本展覧会のタイトル「PERSEUS」とは、三次元的な事物を平面化することで成り立つ写真を、それぞれが異なる距離に位置する星を同一平面上で仮想的に結びつけることで成立している星座への類比として捉えることから導き出されたものです。 写真は被写体が再現前するような幻惑的なものではなく、あくまで現実に存在する事物の断片を形骸化したものであると述べる姫野の思考は、本展覧会に出展される大型のコラージュ作品からも看取することができるでしょう。 弛まず続けられた撮影行為と思考から構築された、姫野にとって初の展覧会を、この機会にぜひご覧ください。
2021年6月8日

飯田鉄 個展「あかるいかげのくに」

展覧会概要 2019年の「球体上の点列」、2020年の「ひかりの秤」に続く、当オルト・メディウムにての3回目の個展となります。今回の展示は、これまでの飯田作品のモチーフである街景・建築物などから離れ、象徴的な意匠を積み重ねて新たな写真世界をつくりあげています。繁茂する植物、海浜、空と雲、庭の一隅など、様々に撮影された作品群はきわめて鮮明でありながら、同時に謎を隠しているようにも感じられます。今回並べられた撮影作品を見渡すときに、画像のあからさまな明瞭さと同時に、何処かもどかしいような印象をも伴う不思議な展示となっています。 2020年にギャラリー・ニエプスで開催された写真展「美徳の譜」にも繋がる、ゆっくりと変容する飯田鉄の新作展をご覧いただければ幸いです。
2021年5月25日

小山貢弘個展「芽吹きの方法」

展覧会概要 小山貢弘は東京綜合写真専門学校研究科を卒業したのち、現在まで東京を中心に実直な発表活動を続けています。小山がレンズを向けてきたのは、活動の初期より一貫して、河川の流域やそこに繁茂する植物に対してでした。大型カメラを用いて得られた緻密な画面は、過剰な主観的表現が抑制されており、観る者の凝視を求めているようです。2018年以来、3年ぶりの個展となる本展覧会においても、小山が弛まずに撮り続けてきた土地や植物の姿が並びます。安易な一瞥においては差異の見出し難いそれぞれの写真は、一時たりとも変化を止めない事物の直截な記録であるとともに、小山にとっては来るべき新たな写真実践を創出するための実験の場でもあるのです。 この機会に是非ともご覧ください。 === 芽吹きの方法無数の小径がある。それは、人が通った跡なのか、獣のそれなのかは定かではない。そのうちの一本を辿って藪の中を歩き続けると、ようやく水の音が聞こえはじめる。 山梨県から東京都、そして神奈川県へと流れる多摩川には、都市部を流れる一級河川であるにもかかわらず、中流域でも護岸化されていない場所が多い。そのため河川敷には整備された土地 […]
2021年4月27日

榎本祐典個展「Yamabiko」

展覧会概要 榎本祐典は東京造形大学デザイン科写真専攻卒業後、2016年「砂塵が過ぎて」(Place M)や2019年「Around」(オリンパスギャラリー)など精力的に展覧会開催を重ねるほか、作品が清里フォトアートミュージアムに収蔵されるなど、現在まで着実な業績を重ね続けている気鋭の写真家です。デビューより一貫してスナップショットで制作されるその作品は、静謐かつ堅牢な画面構成とは裏腹に地道な歩行を伴った弛むことのない身体作業の成果でもあります。 本展覧会では2019年から奥多摩に取材した新作「Yamabiko」を発表いたします。決して特異な風景ではないのだけれども、何者かに見られているようなある種の「怖さ」を榎本はその場所と写真から感じるといいます。土地と写真家との名づけ難い交感を記録した写真群をぜひご覧ください。
2021年4月13日

横澤進一 個展「クサビノ」

展覧会概要 横澤進一は、個展やグループ展、写真集など精力的に発表を続ける写真家で、近年では写真家や画家によって構成されるグループ「FŪKEI」としても展示や出版など幅広く活動しています。 また、横澤はスナップ写真を主としながらも、猫を被写体に捉えた写真の評価も高く、日本人写真家による猫をモチーフとした写真を集め、Ibasho Gallery(ベルギー)など世界各地を巡回展示した「Neko Project」で最優秀賞を獲得するなど、評価を高めています。 本展覧会は2011 年に銀座ニコンサロンで開催された『煙野』以来、1 0 年ぶりの個展となります。生まれ育った埼玉を中心として、ひたすら歩き、撮る。横澤のそうした撮影プロセスは、カメラを手にした初めより一貫して変わることなく、本展で発表される近作においても続けられています。極めてストレートな表現でありながら、遠近感が消失したようなその画面は、そこに写る個々の要素が緊密に結合して生まれた、名付けがたいひとつの像が立ち現れているかのようです。 極めて具体的でありながら、見る者の内に抽象的なイメージを呼び起こすような写真群を、この機会にぜひご覧 […]
2021年3月30日

鈴木敦子 写真展「lmitation Bijou」

展覧会概要 鈴木は1981年福井県生まれの写真家で、2008年に大阪ビジュアルアーツ専門学校写真学科夜間部を卒業。 これまで自身の体験とその外側にある世界を交差する〝内と外の境界線〟を感じさせる作品や、目の前に実在する対象を通して、その向こう側に見えてくる〝かつてその場所に在ったであろう記憶の痕跡や残像〟のようなイメージを撮影し、写真作品に投影してきました。 そんな中鈴木は、作品をつくり続けていく上で、自分にとって真実や大切なものは何かという疑問を抱くようになります。東京から故郷である福井に拠点を移す事をきっかけに、その問いを探る為、実験的にiPhoneのカメラで自身の身の周りの出来事を撮影し続け、Instagramのアカウントに〝Debris(破片)〟というタグをつけて写真を蓄積していきました。 2019年にその束を編集した写真集「Imitation Bijou」をDOOKSより刊行し、今回展示する作品はその写真集から選んだ写真になります。タイトルの「Imitation Bijou」は、「模造宝石(本物に似せてつくられた宝石)」という意味を持ちます。それは〝模造〟と提示したものに価値 […]
2021年3月16日

福本楓 写真展「最後の晩餐」

展覧会概要 私にとって食事は料理人である両親がおいしいご飯を作ってくれて、それを囲んでたくさん笑って過ごせる特別な時間である。と同時にそれは私にとっての当たり前でもある。食事をしなければいけないから何も考えずとっている人が多いが、私はそれがもったいないと思う。必要で、しなければいけない食事でも私は楽しみたいと思うし、みんなにも楽しんで欲しい。 「最後の晩餐」は、明日世界が終わるとしたら何を食べたいかを家族や知人、初対面の未来の友人等に質問し、その回答を私の中に取り込み再現し撮影しました。この質問によって普段食事に興味のない人でも“食べること”を意識した回答を出し、中でも多かったのは最後は家族と暖かい食事を食べて迎えたいという答えでした。 しかし本当に“最後”が訪れた時、もしかしたら家族の元へ帰る時間はないかもしれない、もしくは1人で食べるかもしれないし、友達と食べるかもしれない。そんな“かもしれない”場面を私なりの形で、作り上げた作品です。
2021年3月9日

「Qualities in Bodies」

展覧会概要 蔡傳基(ツァイ チェンケイ)は銀塩写真の物質性に着目し、印画紙に花火を当てることで、その光と高温がどのような記録を残すか実験しています。このプロセスでは印画紙上に具体的なイメージが残るはずがないのにもかかわらず、多くの人たちがそこに生じた像をあたかも宇宙のように見たのです。 一方、デジタル写真の非物質性に着目したNigel Wong (ナイジェル ワン)はインターネット上にあるイメージをコードに変換し、プリントアウトしました。その結果大量の紙に記された文字列は、非物質的なイメージでもコードでもなく、まるで物質の塊のようにも見えてしまいます。 本展覧会では、イメージの生成について異なるアプローチを経て制作された作品を、同じ空間内で展示することによって、新たな対話の可能性を提示いたします。
2021年2月23日

岡田翔キュレーション「error CS0246」 Vol.3 − 金村修個展「Lead-palsy Terminal」

展覧会概要  金村修は、東京の街をソリッドに撮影する写真家として国内外で人気を博しています。しかし、現在のコロナ禍において撮影された金村の写真には、これまでモチーフとして扱われてきた都市の雑踏が影を潜め、これまでに見られなかった都市の余白が浮かび上がります。  今回の展示は、今年撮影された〈廃墟〉化した空港の写真とともに、過去に金村が収めた郊外写真から会場を構成することで、都市の変容を見据えたポスト・パンデミックの芸術を思索します。 ===  この度、金村修、小松浩子、篠田優による連続個展「error CS0246」を開催します。いまだ終息の目処が立たない新型コロナウイルスは、私たちの日常生活に大きな変化をもたらしました。感染予防対策として、物理的な接触を避けるために築かれる〈壁〉の存在は、ボーダーレスを標榜して速度を求めてきたグローバリズムをそれ以前へと巻き戻そうとするものです。街の至るところで、密閉空間を避けること、集団にならないことなどの制限が求められ、感染予防対策の強化が続いています。一方、各所で導入されたテレワークは、自宅の部屋をオフィスにすることで、これまでのプライベート/ […]