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2020年11月24日

岩崎美ゆき個展「My Garden(2015-2020)」

展覧会概要 岩崎美ゆきは2018 年武蔵野美術大学映像学科を卒業。2017 年には第17 回「1_WALL」では奨励賞(増田玲選)を受賞。Alt_Mediumでは2019年に開催された「この海は、泳ぐためではありません」より2度目の個展となります。 岩崎はその場所に対峙し写すことと、その結果現れたものについて意識し思考を巡らせ作品を制作してきました。今回発表される作品「My Garden(2015-2020)」の舞台となったのは、岩崎の祖母、叔母、母と代々、女が手入れをしてきた実家の庭です。 ついに手を入れる人がいなくなり、文字通り“すべてを片付ける”事となった庭。その撮影行為は、岩崎にとって今まで手入れをしてきた女たちや、その女たちと庭に流れた時間、時代に思いを馳せるものではなく、ましてやこれから片付けが始まる庭への記録的行為でもありませんでしたが、岩崎は自ら撮影したその写真によって「私の庭」を感じたと話します。 記録や記憶と結びつきやすい写真というメディアにおいて、岩崎は鑑賞者の前にある「写真」と、そこに映る情景に思いを馳せようと試みる鑑賞者との関係性を「私の庭」から見つめています […]
2020年11月10日

田川基成写真展「Vernacular Churches」

展覧会概要 長崎県の離島出身の写真家・田川基成は、自身のルーツや様々な土地で暮らしてきた経験から、移民と文化、風景と記憶などをテーマに作品を撮ってきました。 田川は2016年頃から、自身の故郷に目を向けはじめます。そして、約600もある島々の間を幾度にもわたって旅し、この海域をフィルムに写してきました。その対象は、風景から人物まで多岐に渡っています。 本展ではその「見果てぬ海」シリーズの中から、とくに長崎県の離島に多い「土着のキリスト教会」のありようを捉えた作品群を展示します。 === 長崎県の離島には約70のカトリック教会が存在します。その多くが、瓦や木材などを使った土地固有の建築様式で造られた教会です。古いものでは100年以上前に建てられ、地域の信徒によって代々守られてきました。 16世紀、この海域にポルトガル船が初めて来航すると、宣教師による布教が行われ、各地にキリスト教徒が増えていきました。江戸時代の禁教政策によって信徒の数は減りましたが、中には潜伏キリシタンとして隠れ、あるいは海を渡って弾圧を逃れ、信仰を後世に伝えた人々がいました。 それから250年以上が経った明治初頭。禁教 […]
2020年10月6日

田近夏子個展「二度目の朝に」

展覧会概要 田近夏子は1996年生まれ岐阜県出身の新進作家です。田近は東京工芸大学芸術学部写真学科在籍中に、塩竈フォトフェスティバル2018に於いて本作「二度目の朝に」で写真賞大賞を受賞しました。 この度開催される同タイトルの展覧会は田近による初の個展となります。また、会場では塩竈フォトフェスティバル写真賞大賞の副賞によって制作された初の写真集を発売いたします。 夏が始まるころ愛犬が亡くなったお風呂場は、奇しくも田近が3歳の頃に目の前で亡くなった祖父の最後と同じ場所でもありました。 愛犬の死を知らせる母からの連絡により、幼い頃の曖昧な記憶と今回の出来事が“お風呂場”を通して交わるように感じたと、田近は語っています。 本作からは身近なものを失っても流れゆく日々の中で、ふとした瞬間に、たゆたう記憶のきっかけを掴み取るような眼差しを感じさせます。 この機会にどうぞご高覧ください。 === 二度目の朝に 夏が始まる頃、実家の愛犬が亡くなった。息を引き取った場所はお風呂場。其処は3歳の私の目の前で祖父がなくなった場所だった。 前日までいたその場所から連絡がはいる。「30分ほど前になくなりました」 […]
2020年7月21日

篠田優個展「on the record|建築とその周囲」

展覧会概要 篠田優は1986 年生まれ、長野県出身。現在は東京を拠点に活動する写真家です。 本展覧会「on the record|建築とその周囲」では2017年、長野県信濃美術館で発表された「Voice(s)」から継続して篠田が撮影している、美術館内部やその周囲をとらえた写真を発表します。 「Voice(s)」から一貫して篠田は、建設当初に撮られる竣工写真のような、理想的な建築物の姿を後世へと残すことを目的とした記録を行なうのではなく、窓や椅子といった、建築の実際的な機能を担う部分を記録することに集中してきました。篠田がとらえてきた事物は、理想としての美術館の姿からは省かれてしまうような、しかし、美術館を構成し、その機能を可能にしている存在です。それらを撮影して組み合わせることは、公的で「大きな」記録の欄外に、私的で「小さな」記録を書き込もうとするような試みともいえるでしょう。また、篠田は撮影することに随伴して、場所の印象と自らの撮影行為を素描するようなテキストも書き記しています。そのテキストは自らの撮影行為を振り返るとともに、そのときに写し得なかったものを覚えておくためのメモのようで […]
2020年3月17日

Jakuyo 個展「Whisper」

展覧会概要 現代都市に生まれ、育てられた私達は生まれつきから政治や偏見など人間文明の争いに囲まれ、当たり前のように日常生活の一部分として受け入れたが、それは暗くて長いトンネルの中で永遠に歩き続けるような気持ち、虚しくて苦しい。 それに比べて、昔からこの地球のどこかで逞しく生き生きしている生命たちは時間や国境とかに関わらず、長い歴史の中で光のように純粋で美しく輝いている、あらゆる醜いものと全く関係ない彼らはまるで「永遠」の詩を囁いてる気がする。 こんな彼らを見ると、自分という存在はいかにも矮小で哀れなものだと気付いて、自分の中でずっと響いている原風景を最大限に形をしたものです。
2020年2月25日

「imshow」

展覧会概要  本展「imshow」は、写真、インスタレーションなどの表現からなる展覧会です。現在、「写真」という映像メディアはデジタル化やソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の発展に伴い、写真家だけではなく多くの人にとって親しみやすいメディアのひとつとなりました。  写真は、基本的にはレンズが光を集約することで結ばれた像を切り取り、印画紙に焼き付けたものです。その際にレンズを対象へ向けるフレーミングは、写真家にとって技術であり思考そのものとして扱われてきました。そのため、フレーミングという行為は、撮影においては「画角」、編集では「トリミング」、「マスク」などそれぞれの段階で取り組まれます。つまりそれは、撮影時や編集時においても常に世界をどのように切り取るのかを重要視してきたことの表れです。  本展覧会名である「imshow」とは、コンピューターでイメージを表示させる際に用いるプログラミング言語です。本展では作家がどのように世界をみて、切り取り、またはどのようにイメージを作品として受け入れるのかという点に着目して、作品とドキュメントから展示空間を構成しています。  本展はこの […]
2020年1月14日

Alt_Medium特別展示

展覧会概要 Alt_Mediumでは2020年最初の展示として、篠田優が今まで別会場での展覧会で出展した作品や、2020年1月20日(月)から2月1日(土)まで表参道画廊(東京)で開催される個展へとつながる作品群を展示しています。 よろしければどうぞお越しください。 【開廊時間】*本展覧会は特別展示につき、開廊時間は13:00〜19:00となっておりますのでご注意ください。
2019年12月24日

山中南実個展「andante」

展覧会概要 山中南実は1997年東京都出身、2019年日本写真芸術専門学校を卒業した若手写真家です。山中は自身の作品や、それを生み出す日常について「生を思い出させてくれるきっかけは小さいけれど身近にある」と話し、空気感のような、事物ではないけれどもそこにあるはずのものといった、生きていることを思い出す瞬間を撮影します。 本展覧会「andante」では季節の変化や風の心地よさといった、せわしない日常の中ではただ流れ過ぎてしまうような小さなきっかけをカメラを通して丁寧に掬いとった写真が並びます。 この機会にどうぞご高覧ください。
2019年12月15日

長田果純 写真展「平凡な夢」

展覧会概要 長田果純はフォトグラファーとして、様々なジャンルで活躍する中、作品を発表する度に新しい一面をのぞかせてきました。 ありふれた日常でありながら、夢想的で、「ここではない遠い場所」を想起させる写真たち。水面に広がる波紋のような静けさを宿していながらも、そこには感情の機微や温もりが確かに存在していることから、長田が何を軸に撮影してきたかが伝わってくるでしょう。 本展覧会で約3年半ぶりに発表される「平凡な夢」は、彼女がある時から体感するようになった〈浮遊感や離脱する感覚〉そして〈自分を“もう一人の自分”が見ているような感覚〉がきっかけとなり、集積された体験が具現化されて、ひとつの作品群として誕生しました。 長田はこの感覚を「まるで現実の世界が、終わりのない“平凡な夢”のように感じられた」と表現しています。彼女にとってこの時期は、靄(もや)がかったような、深い霧の中をさまよい続ける絶望的な時間でしたが、そうした夢現の精神の渦中で撮影された写真は、どこまでも純心な美しさを帯びたものでした。 そして、これまで疑うことなく続けてきた「写真を撮るという行為」が、改めて自分を救済してくれたと、 […]
2019年12月3日

RHESS EXHIBITION「QWERTY」

展覧会概要 イラストレーター 九島 優とグラフィックデザイナー 鈴木 椋史によるクリエイティブプロジェクト「RHESS」の展覧会「QWERTY」を開催します。 ともに東北芸術工科大学出身で、九島は日本画コースを卒業後、個展や作品提供といった作家活動を、鈴木はプロダクトデザイン学科を卒業後に広告代理店のグラフィックデザイナーとして経験を重ねてきました。 2015年より共同制作を開始。同年12月に東京渋谷でオールナイトの展示/音楽イベント「QWERTY TOKYO」を開催。2019年からは活動名を「RHESS」と題し、写真とイラストレーションをリンクさせた初作品集「RHESS ARTBOOK」を上梓。その後も楽曲制作とアートピースを掛け合わせたカセットテープ作品「ASTRA」をリリースし、COMITIAなどのイベントで発表してきました。 本展では二者の新規作品を含めた、「RHESS」としての一年の活動を原画や大判出力で振り返ります。
2019年11月26日

岩崎美ゆき写真展「この海は、泳ぐためではありません」

展覧会概要 岩崎美ゆきは2018 年武蔵野美術大学映像学科を卒業。2017 年には第17 回「1_WALL」では奨励賞(増田玲選)を受賞。岩崎はこれまで撮影する場所に対してフラットな関係性を保ちながら、見ているようで見ていないものや、空間を提示しようと試みてきました。 岩崎にとってはじめての個展である「この海は泳ぐためではありません」で、岩崎は自身とは縁のない式根島を撮影しています。いまだ手つかずの自然を残しながらも、人為や天災によって徐々にその形をかえゆく土地を岩崎は、” 少し閉じながらも変わりゆく場所” と表現しています。そこに立っていた岩崎の風景と、そこに立っていない鑑賞者が見る” 写真に写った風景”。それぞれ対峙した際に生じる風景の揺らぎを、どうぞこの機会に御覧ください。 -Alt_Medium
2019年11月12日

喜多村みか 写真展「TOPOS」

展覧会概要 喜多村みかは1982年福岡県生まれの写真作家で、2008年東京工芸大学院芸術学研究科メディアアート専攻写真領域を修了。 喜多村は主にスナップショットという技法を使用し、非常に身近でありながら少し距離感がある、どこともいえない世界を切り取ります。その様子は作家自身のというよりは作家の前に広がる風景の身じろぎのようであり、絶え間なく揺らぐ世界の隙を捉えたかのようでもあります。 今回発表される「TOPOS」は「VOCA展2019現代美術の展望─新しい平面の作家たち─」において山峰 潤也氏(水戸芸術館現代美術センター学芸員)より推薦を受け出品され、大原美術館賞を受賞した作品です。本作品で喜多村は、自身が中学生時代を過ごした長崎と、それまで直接的には縁のなかった広島を定期的に通い撮影しています。そのある年、喜多村は長崎でも、広島でもない場所で平和記念式典のテレビ放送の様子を撮影。その写真を後日眺めていたときに感じた”遠くのどこか”を眺める行為について思いを巡らせたことが本作へと繋がります。 喜多村は、今、自身の写真について「すべての場所に言えるのは、そこは何かが起こった後であり、何か […]
2019年10月29日

古野達也写真展「まなざしの中の静けさ / Silence in a gaze」

展覧会概要 古野達也は、写真というメディウムを用いて「見る」という行為を問い続ける、気鋭の写真家です。 本展覧会「まなざしの中の静けさ / Silence in a gaze」は、2018 年 10 月に開催された「実在-being-」以降 Alt_Medium での二度目の個展となります。 古野の、探究的とも評すことのできる制作への姿勢と、暗室プロセスから生まれる美しい仕上がりのプリントは、本展覧会で発表される新作にも一貫しています。「事物が “よく見える” とき、そこには「静けさ」が在る」、と古野は独特の、しかし自身の写真への的確な換言とも捉えるべき言葉で表しています。古野の作品は特別なギミックを徹底的に排したようなストレート・フォトグラフィーでありながら、どこか幻惑的であり、かつ奇妙な情緒を湛えているようにも見えます。 この機会にぜひとも御覧ください。 ―Alt_Medium === 見ること、感じることの曖昧さへの関心が制作の動機となっています。作品としてまとめてきた写真を見ていると、何かを発見した時のような喜びを感じます。同時に、理解されることを拒むような有り様が、私を強く揺 […]
2019年10月1日

「バライタファインプリントゼミ展」

展覧会概要 東京工芸大学の前期ゼミの一つ、バライタファインプリントゼミによる学生13人+教授一人のモノクロ手焼きでの作品展示です。バライタでの制作をしてきた者も、改めて挑戦した者も各々がテーマを決め、暗室作業を通し写真と向き合って制作をしました。ご覧ください。