archive

2021年3月16日

福本楓 写真展「最後の晩餐」

展覧会概要 私にとって食事は料理人である両親がおいしいご飯を作ってくれて、それを囲んでたくさん笑って過ごせる特別な時間である。と同時にそれは私にとっての当たり前でもある。食事をしなければいけないから何も考えずとっている人が多いが、私はそれがもったいないと思う。必要で、しなければいけない食事でも私は楽しみたいと思うし、みんなにも楽しんで欲しい。 「最後の晩餐」は、明日世界が終わるとしたら何を食べたいかを家族や知人、初対面の未来の友人等に質問し、その回答を私の中に取り込み再現し撮影しました。この質問によって普段食事に興味のない人でも“食べること”を意識した回答を出し、中でも多かったのは最後は家族と暖かい食事を食べて迎えたいという答えでした。 しかし本当に“最後”が訪れた時、もしかしたら家族の元へ帰る時間はないかもしれない、もしくは1人で食べるかもしれないし、友達と食べるかもしれない。そんな“かもしれない”場面を私なりの形で、作り上げた作品です。
2021年3月9日

「Qualities in Bodies」

展覧会概要 蔡傳基(ツァイ チェンケイ)は銀塩写真の物質性に着目し、印画紙に花火を当てることで、その光と高温がどのような記録を残すか実験しています。このプロセスでは印画紙上に具体的なイメージが残るはずがないのにもかかわらず、多くの人たちがそこに生じた像をあたかも宇宙のように見たのです。 一方、デジタル写真の非物質性に着目したNigel Wong (ナイジェル ワン)はインターネット上にあるイメージをコードに変換し、プリントアウトしました。その結果大量の紙に記された文字列は、非物質的なイメージでもコードでもなく、まるで物質の塊のようにも見えてしまいます。 本展覧会では、イメージの生成について異なるアプローチを経て制作された作品を、同じ空間内で展示することによって、新たな対話の可能性を提示いたします。
2021年2月23日

岡田翔キュレーション「error CS0246」 Vol.3 − 金村修個展「Lead-palsy Terminal」

展覧会概要  金村修は、東京の街をソリッドに撮影する写真家として国内外で人気を博しています。しかし、現在のコロナ禍において撮影された金村の写真には、これまでモチーフとして扱われてきた都市の雑踏が影を潜め、これまでに見られなかった都市の余白が浮かび上がります。  今回の展示は、今年撮影された〈廃墟〉化した空港の写真とともに、過去に金村が収めた郊外写真から会場を構成することで、都市の変容を見据えたポスト・パンデミックの芸術を思索します。 ===  この度、金村修、小松浩子、篠田優による連続個展「error CS0246」を開催します。いまだ終息の目処が立たない新型コロナウイルスは、私たちの日常生活に大きな変化をもたらしました。感染予防対策として、物理的な接触を避けるために築かれる〈壁〉の存在は、ボーダーレスを標榜して速度を求めてきたグローバリズムをそれ以前へと巻き戻そうとするものです。街の至るところで、密閉空間を避けること、集団にならないことなどの制限が求められ、感染予防対策の強化が続いています。一方、各所で導入されたテレワークは、自宅の部屋をオフィスにすることで、これまでのプライベート/ […]
2021年2月9日

岡田翔キュレーション「error CS0246」 Vol.2 − 篠田優個展「ひとりでいるときのあなたを見てみたい」

展覧会概要 現在、篠田優は壕や取り壊される美術館などをモチーフとして、そのモノに蓄積された記憶や記録の痕跡を〈記録〉しています。  今回の展示では、2013年から2016年にかけて撮影された過去作による展示構成を試みています。そこには、篠田が扱うモチーフが物質的な美しさから、現在の記憶や記録の痕跡に纏わるものへと移り変わっていく兆候をみることができます。  自身の過去作を呼び起こし、自己批判も厭わない篠田の写真に対する姿勢は、矛盾をはらみながら変化を遂げる社会に向けて自身をアップデートする試みです。 ===  この度、金村修、小松浩子、篠田優による連続個展「error CS0246」を開催します。いまだ終息の目処が立たない新型コロナウイルスは、私たちの日常生活に大きな変化をもたらしました。感染予防対策として、物理的な接触を避けるために築かれる〈壁〉の存在は、ボーダーレスを標榜して速度を求めてきたグローバリズムをそれ以前へと巻き戻そうとするものです。街の至るところで、密閉空間を避けること、集団にならないことなどの制限が求められ、感染予防対策の強化が続いています。一方、各所で導入されたテレ […]
2021年1月7日

岡田翔キュレーション「error CS0246」 Vol.1 − 小松浩子個展「自己中毒啓発」

展覧会概要  小松浩子は、写真において見過ごされてきた「物質性」を表現媒体として用いる制作を行ってきました。  壁のみならず床など展示空間全体を覆い尽くす小松の作品は、作品鑑賞における移動に伴い、床全面に敷き詰められた作品を否応なしに踏むという事態を生じさせます。このような体験は、写真の物質性と共に美術の展覧会において見過ごされてきた作品の「展示」と「保存・保護」といった矛盾した関係性を顕にしました。  今回の展示では、基本的に展示空間への入室を禁じて、展示場所の窓から作品を鑑賞するという発表形式を取っています。窓からは、出展作品である積み重なったロール紙が時間の経過とともに歪み、形を変えていくという変化を見ることができます。今回の取り組みは、「展示」と「保存・保護」といった矛盾した関係性を俯瞰する取り組みです。 ===  この度、金村修、小松浩子、篠田優による連続個展「error CS0246」を開催します。いまだ終息の目処が立たない新型コロナウイルスは、私たちの日常生活に大きな変化をもたらしました。感染予防対策として、物理的な接触を避けるために築かれる〈壁〉の存在は、ボーダーレスを […]
2020年12月22日

紀雪晗 個展「3.5 years」

展覧会概要  インターネットが発達した現代において、人の人間関係は現実からインターネット上にまで拡張された。SNSで友達を追加し、スマートフォンやパソコンで他人の状態を観察する。つまり、友人になる対象を選択する時、ネットでの情報公開と取集は既に現代の人との付き合いにおいて不可欠な過程になった。しかし、ネット上で公開できる情報は自由である。ライン、WeChatという内圏からFacebook、Weiboという公開の外圏まで、誰でもネット上では自分の“キャラ”を作ることができる。ある人はネットを舞台として理想的な自分を演じる。ある人はネット上で自分の不遇を訴える。私達はこのような“キャラ”から相手を判断し理解しているつもりになっている。  来日三年半、私は新しい人間関係を構築していた。日本語学校から大学院まで様々な人と知り合って、彼らの“キャラ”の判断をした。お互いに選択しあった何人かは本物の友達になった。私は彼らに風船をあげて彼らの“キャラ”を撮った。これらは3.5yearsの人間関係の展示である。
2020年12月12日

First three-year plan / 第一次三カ年計画(2020-2023) Tatekawa Kiyoshiro film collection 6

アーティストステートメント 三次元の世界を二次元の映像に変換し、プロジェクターで再び三次元の世界へ還元する。この上映会は、二次元と三次元の間を探る試みである。上映会は撮影され再び二次元の映像へ変換される。この変換作業は繰り返し行われる。 上映作品(5作品46分) ・Part 29 紗景 / 9分 / 2020・Part 30 射面 / 10分/ 2020・Part 31 増速 / 12分 / 2020・Part 32 写映 / 7分 / 2020・Part 33 焦移 / 8分 / 2020
2020年12月1日

飯田鉄 個展「ひかりの秤 EPIPHANIA」‐庭園試論‐

展覧会概要 これまで都市の建築物や街のデティールなどを端正な視角で切りとり、加えて時間のニュアンスを巧みに掬い上げる写真などで高い評価を得ている作者ですが、今回は飯田鉄が撮影に本格的に取り組み始めた、1970年代のモノクロームのスナップショットを中心にした展示です。アルカイックな様式性を帯びたもの、静謐な叙情性に富んだもの、さらにはいささか破調も見られるものなど、瑞々しさが溢れる初期の飯田作品を展示いたします。
2020年11月24日

岩崎美ゆき個展「My Garden(2015-2020)」

展覧会概要 岩崎美ゆきは2018 年武蔵野美術大学映像学科を卒業。2017 年には第17 回「1_WALL」では奨励賞(増田玲選)を受賞。Alt_Mediumでは2019年に開催された「この海は、泳ぐためではありません」より2度目の個展となります。 岩崎はその場所に対峙し写すことと、その結果現れたものについて意識し思考を巡らせ作品を制作してきました。今回発表される作品「My Garden(2015-2020)」の舞台となったのは、岩崎の祖母、叔母、母と代々、女が手入れをしてきた実家の庭です。 ついに手を入れる人がいなくなり、文字通り“すべてを片付ける”事となった庭。その撮影行為は、岩崎にとって今まで手入れをしてきた女たちや、その女たちと庭に流れた時間、時代に思いを馳せるものではなく、ましてやこれから片付けが始まる庭への記録的行為でもありませんでしたが、岩崎は自ら撮影したその写真によって「私の庭」を感じたと話します。 記録や記憶と結びつきやすい写真というメディアにおいて、岩崎は鑑賞者の前にある「写真」と、そこに映る情景に思いを馳せようと試みる鑑賞者との関係性を「私の庭」から見つめています […]
2020年11月10日

田川基成写真展「Vernacular Churches」

展覧会概要 長崎県の離島出身の写真家・田川基成は、自身のルーツや様々な土地で暮らしてきた経験から、移民と文化、風景と記憶などをテーマに作品を撮ってきました。 田川は2016年頃から、自身の故郷に目を向けはじめます。そして、約600もある島々の間を幾度にもわたって旅し、この海域をフィルムに写してきました。その対象は、風景から人物まで多岐に渡っています。 本展ではその「見果てぬ海」シリーズの中から、とくに長崎県の離島に多い「土着のキリスト教会」のありようを捉えた作品群を展示します。 === 長崎県の離島には約70のカトリック教会が存在します。その多くが、瓦や木材などを使った土地固有の建築様式で造られた教会です。古いものでは100年以上前に建てられ、地域の信徒によって代々守られてきました。 16世紀、この海域にポルトガル船が初めて来航すると、宣教師による布教が行われ、各地にキリスト教徒が増えていきました。江戸時代の禁教政策によって信徒の数は減りましたが、中には潜伏キリシタンとして隠れ、あるいは海を渡って弾圧を逃れ、信仰を後世に伝えた人々がいました。 それから250年以上が経った明治初頭。禁教 […]
2020年10月27日

ルーク・クラウチ個展「空の旅の思い出」

展覧会概要 空の旅の思い出 羽田空港のJAL工場見学〜 SKY MUSEUMでは、1970年代から現在までの日本航空の歴代制服が展示されている。展示ケース内の制服は、各時代の流行のスタイルを反映しており、時代の古いものは特に非実用的だ。制服を着たマネキンはみな解剖学的に不自然だ――ありえないほど細身で、手足は異常に長く、頭部は卵型をしている。マネキンのポーズはどれも似かよっているが、手足が変な角度に曲げられているものもあり、全く同じではない。黒のパンプスを履いているマネキンもあるが、大半が裸足で、展示方法のちぐはぐさも目立つ。特に、最近注目されている日本企業のヒール靴着用規定やそれに反対する#kutoo運動を踏まえると、マネキンが靴を履いていないことに驚いた。今年4月、日本航空は新制服を導入し、女性従業員に対するヒールの着用規定を廃止した。5月にはANAが日本航空に続いて同様の変更を行った。 これらの一連の出来事は、羽田空港の東西滑走路発着の新しい飛行ルートの開設と重なった。新規路線開設・増便は、2020年に東京での開催が予定されていた夏季オリンピックによる観光客の増加を見越したものだ […]
2020年10月20日

山口崇多個展「shopping」

展覧会概要 昔から、買い物に行くことが好きだ。お店に行くと、必ず新しいものを発見することができる。欲しかったものが買えたときは天にも昇る気持ちになるし、好きなものを集める喜びもまた格別だ。ただ、買い物は楽しいことばかりではない。お目当てのものが売り切れていることもある。お財布の都合で何も買えないときだってあるし、余計なものを買ってしまって後悔することもある。そんなところも含めて、買い物は面白い。 今回は「買い物」の中でも特に楽しい「買う」「集める」という行為にスポットを当て、グラフィックを制作しました。最近買い物に行く回数が減ってしまった人にも、買い物で得られる高揚感を思い出して頂けたらと思います。